「教職員有志の会」の声明文

2015年7月27日の「声明」を再掲します。
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安全保障関連法案の廃案を求める声明
2015年7月27日
安全保障関連法案の廃案を求める佛教大学教職員有志


 われわれ佛教大学教職員有志は、衆議院において、安全保障関連法案が与党などの賛成多数で採決されたことに対し、強く抗議し、これを廃案とすることを求める。


 戦後日本再出発の原点は、国内外において多くの犠牲をもたらした戦争への反省であった。日本国憲法前文は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が生じないようにするという日本国民の決意をもって、国民主権を定立した。以来、日本国は、国際社会において、非戦の国としての威信を確保し、国民を守ってきた。その拠って立つ立憲主義は、法(言葉)による支配であり、そこにおいては主権者の言葉が権力を縛るのである。


 圧倒的多数の憲法学者は、安保法制関連法案を「違憲」と判定している。また多くの有識者が、この法案の問題性を指摘しており、国会論戦においても、さまざまな問題が浮き彫りにされている。それにもかかわらず、従来の政府見解において違憲と明言されつづけてきた集団的自衛権の行使が容認され、しかも活動地域を限定せず、兵站(logistics)等の活動をなしうるとされている。このことは、少なくとも、日本がその「戦力」をもって戦争に参加すると他国からみなされざるをえないものである。
 政権担当者による「総合的」な「判断」によって派遣された自衛隊が、現地で不可避的に武力衝突へと巻き込まれる可能性は低くない。このことを懸念するのは当然であり、院内においても院外においても、このことが重要な議論の対象となっている。
 今回の採決強行は、こうした真摯な議論を封ずるものにほかならない。院内で多数を制していれば何でも押し通すことができるかのような様相は、まさに民主主義の危機である。この事態が、立憲主義と民主主義を脅かし、日本国民と世界諸国民の平和と安全をも脅かしかねないことを、われわれは危惧する。


 われわれは、言葉の力を信ずるものであり、日本国憲法の条文(言葉)が、平和と命と自由と権利を守ってきたことを知っている。この憲法の下にあって、戦場で日本の部隊による死者を一人も出さなかったことは、われわれの誇りとするところである。
 われわれは、貧困・社会的差別など、戦争につながるあらゆる社会的不平等と不正義を許さない。
 われわれは、日本の若者を二度と戦場に送り出さず、次世代を担う若者たちに、平和のための取り組みを継承する。
 われわれは、日本を、殺し殺される国に変質させることを拒否する。
 われわれは、国会が、憲法の精神に則り、日本の憲政が培ってきた民主的な審議プロセスを遵守し、国民各層の意見に真摯に耳を傾け、安全保障関連法案を廃案とし、真に世界平和に資する途を探ることを望む。またわれわれ自身が、立憲主義と民主主義の擁護者として、微力を尽くすことをここに表明する。